1人でシステムを育てるのは限界がある。そこで複数のAIを「会社の部署・社員」に見立てて役割分担させた実録です。全部が観測・研究用で、売買という核心は必ず人間が承認する設計にしました。
⚠️ この記事は2026年7月時点の情報です。Claude Codeや各種AIツールの仕様やサービスは変わる場合があるため、最新かつ正確な情報は各公式ドキュメント・公式サイトもご確認ください。あわせてコーディング未経験の会社員が15万行のシステムを作るまでもどうぞ。
こんにちは。コードが書けない会社員が、AIで実務システムを作っている記録です。今回のテーマは、少し変わっています。「AIエージェントで会社の組織を作った話」です。
システムを1人で育てていると、あっという間に手が回らなくなります。「あれもチェックしたい」「ここも監視したい」「この作業とあの作業は分けたい」——やりたいことは増えるのに、頭の中は1つしかありません。そこで私は、複数のAI(人工知能)を「会社の部署」や「社員」に見立てて役割分担させるという仕組みを作りました。
この記事を読むと、こんなことがイメージできるようになります。
- なぜ1つの大きなAIではなく「AIの会社」にしたのか、その理由
- 「組織図(そしきず)」をデータで表すと、何が便利になるのか
- 暴走を防ぐために引いた、たった1本の絶対に越えさせない安全ライン
- 作ってみて良かったこと・うまくいかなかったこと
最初にいちばん大事なことを正直に書きます。このAIの会社はすべて観測・研究用(かんそく・けんきゅうよう)です。英語で言うと read-only(リードオンリー=読み取り専用)。つまり、AIたちは「調べる・数える・比べる・レポートする・提案する」ことしかできません。実際の売買(発注)はしません。銘柄を選ぶことも、買う・売るを決めることも、AIには一切させていません。ここは記事の途中でもう一度、きちんと説明します。
なぜ「1つの賢いAI」ではなく「AIの会社」にしたのか
最初は、私も「賢いAIが1つあれば全部やってくれるのでは?」と思っていました。でも、実際にやってみると問題が見えてきました。
1つのAIに「安全チェックもして、データも集めて、レポートも書いて、提案もして……」と全部お願いすると、何をどこまでやったのか分からなくなるのです。料理でたとえるなら、1人のシェフに「仕入れも仕込みも調理も盛り付けも会計もぜんぶやって」と頼むようなもの。どこかで手が抜けても、誰も気づけません。
そこで考え方を変えました。会社が仕事を「部署」に分けるのと同じように、AIの仕事も細かく分けたのです。この設計には、はっきりした理由(考え方)があります。
| 1つの大きなAI | 役割分担したAIの会社 |
|---|---|
| 何をやったか追いにくい | どのAIが何をしたか一目で分かる |
| 1か所間違えると全部に影響 | 担当が狭いので影響も狭い |
| 権限(けんげん)が集中して怖い | 1人1人の権限がとても小さい |
ポイントは最後の行です。細かく分けるほど、AIの暴走を防ぎやすくなります。1人の社員に大きな権限を与えると危険ですが、「この人はこの1つだけをチェックする係」と決めておけば、たとえAIが変な動きをしても、できることが最初からほとんどないのです。
組織図を「データ」にする — 会社→部署→社員の6階層
私が作ったのは、会社の組織図(そしきず)そのものを1つの設定ファイル(コンピューターが読める台帳)に書いたものです。プロジェクト内では「Group OS(グループ・オーエス)」と呼んでいます。「会社グループのための土台」くらいの意味です。
この組織は、本物の会社と同じように6つの階層(レイヤー)でできています。
- グループ(会社全体のまとまり)
- 会社(company)
- 本部(hq)
- 部署(department)
- 課(section)・係(unit)
- 末端の社員AI(agent)
いちばん下の「末端の社員AI」が、実際に手を動かす1人1人です。とはいえ、彼らがやるのは「調べて報告する」だけ。たとえば、こんな社員AIがいます。
- 設定ファイル変更検知の係:大事な設定ファイルが勝手に書き換わっていないか見張る係
- 時刻判定の係:今が作業してはいけない時間帯(後述する「フリーズ窓」)かどうかを判定する係
- 平易な日本語チェックの係:レポートが私(非エンジニア)にも分かる言葉で書かれているか確認する係
1人1人の仕事が、笑ってしまうくらい狭いのが分かると思います。でもこれが狙いです。狭いからこそ、安全で、動きが読めるのです。
会社は全部で「10社」に分けました
グループの中には、役割の違う会社が並んでいます。実際に登録している会社を、ざっくり紹介します。
| 会社 | 担当(すべて調べる・報告するだけ) |
|---|---|
| 研究会社 | 「どういう時に勝ちやすいか」のパターンを研究する |
| ガバナンス会社 | AIに何をさせてよいか/禁止かを見張る門番 |
| セレクター会社 | 翌日の候補を考える仕組みの観測・分析 |
| データパイプライン会社 | 無料データの収集・整理を担当 |
| テスト/QA会社 | 仕組みが壊れていないかテストで確認 |
| ダッシュボード会社 | 私(人間)が読みやすい形に見える化する |
| 監査/レポート会社 | 全体を第三者目線で点検してまとめる |
| ドキュメント会社 | 手順書(ランブック)を整える |
| 売買ランタイム監査会社 | 売買の本体まわりを「監査だけ」する(触らない) |
| 人間承認Gate会社 | 「人間の承認があるか」を確認する門番 |
会社の名前を眺めると気づくと思いますが、「実際に売買する会社」はどこにもありません。いちばん危険な「売買の本体」に関わる会社ですら、名前は「監査(かんさ)会社」です。つまり点検してレポートするだけで、触りません。これは意図的にそう設計しています。
いちばん大事な安全の骨格 — 越えさせない1本のライン
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。AIに組織を作らせると聞くと、「勝手に暴走して売買したら怖い」と感じる方もいると思います。だからこそ、私は最初に絶対に越えさせない安全ラインを1本引きました。
それは、「銘柄を選ぶこと」と「売買を決めること」は、AIには絶対にやらせない。必ず人間(私)が承認するというものです。この核心の領域を、私は「聖域(せいいき)」と呼んでいます。聖域には、どんなに賢いAIでも足を踏み入れられません。
この安全ラインは、気持ちの問題ではなく、ルールとしてコンピューターに機械的に守らせています。具体的には、組織の台帳に、全社共通で上書きできない「不変条件(ふへんじょうけん=invariants)」を書いてあります。かみ砕くと、こういう約束です。
- 本番ファイルを変更しない(本物の売買プログラムには触らない)
- ライブ売買を決めない・実行しない(買う・売るをAIが決めない)
- 末端の社員AIは実装権限を持たない(手を動かして中身を書き換えられない)
- 社員AIは読み取り専用(read-only)(調査・報告・提案まで)
さらに、社員AIにできることは8種類だけに絞っています。「調べる・分類する・数える・比較する・異常を見つける・レポートする・提案する・(こうしたいと)成長提案する」——この8つ以外は許可リスト(allowlist)に無いので、できません。「発注する」「上書きする」「削除する」といった危ない動詞は、そもそも社員AIの持ち物リストに入れていないのです。
たとえるなら、会社の入り口に厳しい警備員がいて、「調べて報告する人しか中に入れません。お金を動かす人はお断り」と門番をしているイメージです。しかもこの門番のルールは、AI自身では書き換えられません。
作ってみて良かったこと・うまくいかなかったこと
正直に、両面を書きます。誇張はしません。
良かったこと
- 頭の中が整理された。「これはガバナンス会社の仕事」「これはデータ会社の仕事」と役割で考えられるので、非エンジニアの私でも全体像を追えるようになりました。
- 安全ラインが1か所で守れる。各AIに個別に「危ないことするな」と言い聞かせるのではなく、台帳の共通ルール1か所で全社をまとめて縛れます。ここが崩れていないかは、テスト(自動チェック)でも確認しています。
- 担当が狭いので、レポートが具体的になった。「なんとなく調子が悪い」ではなく「この係が、この点で異常を見つけた」と、指さして言えるようになりました。
うまくいかなかった・難しかったこと
- 階層を作るだけでは、実際のデータとはつながらない。最初に作ったのは「組織図の登録」までで、いわば名刺と席次表だけの状態。「社員AI同士が実際にデータを受け渡す」配線は、その後に別途つなぐ必要がありました。ここは今も少しずつ進めています。
- 同じ社員AIが複数の会社に所属する場面がある。たとえば「証跡(しょうせき=記録)を見張る係」は、いろいろな会社で共有されます。これは異常ではなく設計どおりなのですが、「重複登録」と誤解しないよう、共有を正しく表せるように作り直しました。
- 報告が専門用語だらけになりがち。放っておくとAIは難しい言葉で報告してきます。そこで「平易な日本語かチェックする係」までわざわざ用意する羽目になりました。
まとめ — 次の一歩
今回は、複数のAIを「会社の部署・社員」に見立てて役割分担させた実録をお話ししました。ポイントを振り返ります。
- 1人(1つのAI)で全部やるより、細かく役割を分けたほうが安全で、暴走を防ぎやすい。
- 組織図をデータ(台帳)にすると、誰が何をしているか一目で分かる。
- いちばん大事なのは、「銘柄選定と売買は人間が承認する」という聖域を機械的に守ること。AIたちは全員が観測・研究用(read-only)で、発注はしない。
次の一歩としては、この組織図を「絵に描いただけ」で終わらせず、社員AI同士が実際にデータを受け渡して協力し合うところまで少しずつつないでいく予定です。そのときも、聖域の安全ラインは絶対に動かしません。
「コードが書けなくても、考え方を整理して、AIに役割を持たせるだけで、ここまで仕組みは作れる」——これが今回いちばん伝えたかったことです。次回もまた、失敗も含めて正直に記録していきます。
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免責事項
本記事は執筆時点(2026年7月)の情報に基づいています。Claude Codeや各種AIツールの仕様は予告なく変更される場合があります。最新かつ正確な情報は各公式ドキュメント・公式サイトをご確認ください。本記事の内容を用いて生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。


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