会話をやり直すたびにAIが前回を忘れてしまう──そんなモヤモヤを解決する「記憶ファイル」の作り方を、コードが書けない会社員向けにやさしく解説します。テンプレ付き。
⚠️ この記事は2026年7月時点の情報です。Claude Codeや各種AIツールの仕様やサービスは変わる場合があるため、最新かつ正確な情報は各公式ドキュメント・公式サイトもご確認ください。あわせてClaude Codeの使い方【非エンジニア向け】もどうぞ。
Claude Code(クロードコード)を使っていると、こんな経験はありませんか。昨日あんなに丁寧に相談して方針を固めたのに、今日あらためて話しかけると「はじめまして」の顔をされてしまう。前回どこまで進んだのか、なぜその判断をしたのか、AIはきれいさっぱり忘れている――。私も何度もこれで力が抜けました。
この記事では、その「毎回リセットされる問題」を解決する記憶(メモリ)の仕組みを、コードが書けない会社員の目線で紹介します。読み終わるころには、新しい会話を始めても「前回の続きから」AIが自分で状況を把握して動いてくれる状態を、あなたのプロジェクトに用意できるようになります。むずかしいプログラミングは一切いりません。テキストファイルを置くだけです。
なぜAIは「昨日の話」を忘れるのか
まず、なぜ忘れるのかを知っておくと、対策がすっと腑に落ちます。
Claude Codeとのやり取りは、セッション(session=ひとつながりの会話)という単位で区切られています。ひとつのセッションの中では、さっき言ったことをちゃんと覚えています。ところが会話をリセットしたり、日をまたいで新しく話しかけたりすると、それは新しいセッションになり、前のセッションの内容は基本的に引き継がれません。
たとえるなら、優秀だけれど毎朝記憶がまっさらになる派遣スタッフのようなものです。実力は申し分ないのに、昨日の打ち合わせ内容は覚えていない。だから毎朝あなたが「昨日はここまで進めて、この方針で、次はこれをやる予定でした」と説明し直さないといけません。これは正直、しんどいですよね。
そこで登場するのが、引き継ぎノートです。派遣スタッフがいつも決まった場所の引き継ぎノートを最初に読んでから仕事を始める、という運用にすれば、記憶が消えても仕事は続きます。Claude Codeに記憶を持たせるとは、まさにこの「引き継ぎノートを置いて、毎回最初に読ませる」仕組みを作ることなのです。
全体像:索引ファイル1枚+メモの引き出し
仕組みはとてもシンプルで、2つの部品でできています。
- MEMORY.md(メモリ・ドット・エムディー)=索引(さくいん、index)。目次のようなファイルで、「どんなメモがあるか」を1行ずつ並べます。
- memory フォルダ=メモの引き出し。中に「1ファイル=1つの事実」でメモを保存します。
図書館を思い浮かべてください。MEMORY.md が「目録カード」で、memory フォルダの中の各ファイルが「1冊ずつの本」です。目録を見れば「この棚にこういう本がある」と一望でき、詳しく知りたければその本を1冊だけ手に取ればいい。全部の本を最初から読む必要はありません。
なぜ1枚のファイルに全部書かないのか。理由は2つあります。ひとつは、1枚に全部詰め込むと長くなりすぎて、AIが読むのに時間もパワーもかかること。もうひとつは、あとから「あの話だけ直したい」というときに、該当の1冊だけ開けばよく、探す手間が激減することです。目次と本文を分けるのは、分厚いマニュアルを作るときの王道と同じ考え方です。
メモ1枚の中身:先頭に「見出しラベル」を付ける
memory フォルダの中の各メモには、先頭に短いfrontmatter(フロントマター=前書き情報)を付けます。これは本でいう「背表紙のラベル」のようなもので、そのメモが「何者なのか」を一目で示すものです。付ける項目は3つだけです。
| 項目 | 意味 | たとえ |
|---|---|---|
| name(名前) | このメモの短い名札 | 本のタイトル |
| description(説明) | ひと言でどんな内容か | 本の帯の一文 |
| type(型) | 4種類のうちどれか | 本のジャンル(棚の分類) |
このうち一番大事なのがtype(型)です。メモを次の4つのジャンルに仕分けしておくと、AIも人間も「どういう性質の情報か」がすぐ分かります。
| 型(type) | 何を書くか | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| user | あなた(利用者)がどんな人か | ユーザー像 |
| feedback | 進め方への指示・好み | やり方のクセ |
| project | 進行中の作業の状況 | 作業ログ |
| reference | 外部の参照先・気をつける事実 | 資料・注意書き |
具体的にイメージしてみましょう。「私はコードが書けない会社員なので専門用語は言い換えてほしい」というのはuser(あなた自身のこと)。「作業報告は表や図で見やすく出してほしい」というのはfeedback(進め方の指示)。「〇〇の機能をここまで作った、次はこれをやる」というのはproject(進行中の作業)。「このツールは特定の環境で動きが変わるので注意」というのはreference(覚えておくべき外部の事実)です。
4つに分けるだけで、あとで「進め方の指示だけ見直したい」「今の作業状況だけ確認したい」というときに、目当てのメモにまっすぐたどり着けます。
そのままコピーできるテンプレート
ここからは手を動かすパートです。とはいえ、やることはテキストファイルを置くだけです。
1. memory フォルダに置くメモのテンプレ
メモは1枚につき「1つの事実」に絞るのがコツです。先頭に前書き情報、そのあとに本文を書きます。
- ファイル名の例:feedback_visual_reports.md(型+内容が分かる名前にすると探しやすい)
- 中身の型(テンプレ):
- 先頭に区切り線「—」
- name: 作業報告は図表で(短い名札)
- description: 報告は文章だけでなく表や図を必ず添える(ひと言説明)
- type: feedback(4つの型から選ぶ)
- もう一度「—」で前書きを閉じる
- ここから本文。5〜10行程度で、決めた理由や具体例を書く
本文は長く書きすぎないのがポイントです。1枚が長くなってきたら、それは「実は2つの事実が混ざっている」サインなので、2枚に分けましょう。
2. MEMORY.md(索引)のテンプレ
索引には、各メモへの「1行リンク」を並べます。1行の型はこうです。
- 「ファイル名」+「──(ダッシュ)」+「ひと言要約」
- 例:feedback_visual_reports.md ── 報告は文章だけでなく表や図を必ず添える
- 例:user_profile.md ── 利用者はコードが書けない会社員。専門用語は言い換える
先頭に「# Memory Index(メモの目次)」と見出しを付けて、その下にこの1行たちを箇条書きで並べれば索引の完成です。新しいメモを作ったら、この索引に1行足す。これだけが日々の運用です。
3. 毎回読ませる設定にする
最後の仕上げが一番大事です。この索引を、会話の最初に必ず読み込ませるようにしておきます。Claude Codeにはプロジェクトの決まりごとを書いておくファイル(プロジェクト指示)があり、そこに「作業を始める前にMEMORY.mdとmemoryフォルダを読むこと」と一文入れておけば、新しいセッションでもAIが自分から引き継ぎノートを開いてくれます。派遣スタッフに「出社したらまず引き継ぎノートを読む」というルールを渡すのと同じです。
運用のコツ:索引を「太らせない」
この仕組みを続けていくと、メモがだんだん増えていきます。ここで1つだけ気をつけたいのが、索引(MEMORY.md)を太らせすぎないことです。
索引の1行は、あくまで「どのメモに何が書いてあるか」を示す看板です。看板に細かい説明をびっしり書き込むと、目次なのに読むのが大変になってしまいます。1行の要約はひと言(長くても1〜2文)まで、と決めておきましょう。詳しいことは、その先のメモ本体に書いてあるので、看板は短くて構いません。
もし要約が長くなってきたら、思い切って一言に圧縮します。「あれもこれも」ではなく「これはつまり何か」を一言で言い切る。この圧縮作業は、あなた自身が状況を整理し直す良い機会にもなります。実際、私のプロジェクトでも索引は数十行に育っていますが、1行1行は「これは〇〇の話」と分かる短さに保っています。
もう1つのコツは、作業がひと区切りついたら、その日のうちに1枚メモを足すこと。「今日はここまで進めた」「この判断をした理由はこれ」という短いメモを残しておけば、明日の自分(と記憶がリセットされたAI)が迷わず続きから入れます。あとでまとめて書こうとすると、たいてい忘れます。
まとめ:次の一歩
Claude Codeに記憶を持たせる仕組みは、たった2つの部品でできています。あらためて整理します。
- MEMORY.md=目次。1行1メモへのリンクを並べる。看板は短く保つ。
- memory フォルダ=メモの引き出し。1ファイル=1つの事実。先頭に name / description / type の3点セットを付ける。
- 型(type)は user・feedback・project・reference の4つに仕分ける。
- プロジェクト指示に「最初に索引を読む」と書いて、毎回読ませる。
最初の一歩としておすすめなのは、まず1枚だけメモを作ってみることです。型は「user」で、「私はコードが書けない会社員です。専門用語は言い換えてください」と書くだけ。そして索引に1行足して、プロジェクト指示に「最初に読む」と一文入れる。これだけで、次の会話からAIの受け答えが「あなた仕様」に変わるのを体感できます。
記憶を持ったAIは、毎朝ゼロから説明し直す相手ではなく、昨日の続きを一緒に進めてくれる相棒になります。完璧な仕組みを一度に作る必要はありません。1枚のメモから、あなたの引き継ぎノートを育てていきましょう。
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免責事項
本記事は執筆時点(2026年7月)の情報に基づいています。Claude Codeや各種AIツールの仕様は予告なく変更される場合があります。最新かつ正確な情報は各公式ドキュメント・公式サイトをご確認ください。本記事の内容を用いて生じたいかなる損害についても、筆者は責任を負いかねます。


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